質問<400>2001/1/29
実数には有理数と無理数があります。この両者があってはじめて数直 線上のすべての点が表現されます。逆にいうと有理数だけでは数直線上 の点は飛び飛びになります。そこで、次のようなことを考えました。 任意の有理数aと、その「次」の数b(a<bで、その間に有理数は存 在しない)をとる。すると(a+b)/2はa<(a+b)/2<bを満たし、bがaの 「次」であることに矛盾する。 すなわち、どんな2有理数の間にも有理数が存在し、その結果有理数は連 続な点となり、有理数=実数となるのではないか? ということです。もちろん、(a+b)/2のほかにもa、bが正ならその相 乗平均などaとbの間に存在しうる数は無数に考えられます。また、無 理数では同様のことはいえません。 無理数同士の4則演算の結果が無理数になるとは限らないからです。 数学ではありませんが、似たような有名な話があります。的に向かっ てボールを投げるとまずボールは投げたところと的の中間地点に達し、 その後、その中間地点と的との中間地点に達します。このことを繰り返 してもボールは今あるところと、的との中間地点がいくらでもあるのだ から的に近づきはするものの永遠に的には届かない、というものです。 でも実際はすぐにボールは的に届いてしまいます。一方、有理数がどん なに、その中間値があったとしても数直線は埋まりません。この違いは 何なのでしょうか。 よろしくお願い致します。
お返事2001/1/31
from=武田
問1 「有理数=実数となるのではないか?」ですが、これは濃度を考えると、 異なることが分かります。濃度とは、数え上げることのできない無限集 合の個数のことを指します。 自然数の濃度のことを「アレフ・ゼロ」と言い、その集合を可算集合 (可附番集合)といいます。可算集合は、簡単に言うと、自然数と1対 1対応で表せることを指します。 有理数の濃度が「アレフ・ゼロ」となることの証明は下のようになりま す。 ---------------------------------------------------------- 有理数を既約分数で表し、p/qと表すと、それを対(p,q)として 表し、次のように並べると、 (1,1)(2,1)(3,1)(4,1) ……… ① ② ⑥ ⑦ (1,2)(2,2)(3,2) ……… ③ ⑤ ⑧ (1,3)(2,3) ……… ④ ⑨ (1,4) ……… ⑩ ……… すべての有理数が、可附番で表現できるので、自然数に1対1に対応す ることになり、有理数は、可算集合となり、濃度は「アレフ・ゼロ」と なるわけです。 ---------------------------------------------------------- 次に、実数が非可算集合(濃度を単に「アレフ」と言う)となることの 証明は、カントールの対角線論法で言うことが出来ます。 ---------------------------------------------------------- (2x-1)π 実数の集合RとR(0,1)は、写像「y=tan─────── 」 2 によって、1対1対応となるので、実数Rについて考えることは、 R(0,1)において考えることと同じになる。 そこで、R(0,1)と自然数Nが1対1対応にならないことを証明 する。 まず前提として、R(0,1)の実数は、すべて無限小数で表すことに する。例えば、0.24ならば、0.239999……とする。 初めに、R(0,1)を可算集合と仮定する。 f(1)=0.a(11)a(12)a(13)…… f(2)=0.a(21)a(22)a(23)…… f(3)=0.a(31)a(32)a(33)…… ……………… f(n)=0.a(n1)a(n2)a(n3)…… ……………… このようにR(0,1)に属する無限小数が可附番で、自然数と1対1 対応できるものとする。 今、0.a(11)a(22)a(33)……と対角線上の数を取っていき、 m(1)≠a(11),m(2)≠a(22)……となるように数を取り、次のようにα を作ると、 α=0.m(1)m(2)m(3)…… は、α∈R(0,1)となるが、上の可附番のf(k)とは異なるもの になるから、仮定に反することになる。 したがって、R(0,1)は非可算集合。 そして、実数も非可算集合。 ---------------------------------------------------------- 結論として、有理数の濃度と実数の濃度は異なる。……(答) ※「有理数=実数」ではない。無理数が間にたくさん挟まっている わけである。 問2 無理数(+)有理数=実数 無理数(+)有理数=無理数 したがって、 無理数の濃度は、実数の濃度と同じ「アレフ」である。 問3 ゼノンのパラドックスである「アキレスと亀」「矢」「二分法」などが 同じ問題である。 中間を数えていくのが可附番無限集合的考えだから、いつまでたっても 的に行き着かないが、ボールが通過する直線を実数(非可算無限集合) 的考えでとらえると、連続的にボールが通過し、最終的に的に到達する ことになる。 ※今回の質問は大変勉強になりました。しかし、私自身理解が不十分な ところもありますので、カントールの対角線論法や濃度など調べてみて ください。(調べる中で、「集合論」と異なる「区体論」なるものがあ ることが初めて分かりました!!感謝!!)