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このサイトで、昔に内積の質問をしていた人がいたので読んでみましたが、 それでもしっくりきません。 そもそも三角関数の意味をきちんと理解できていないのかもしれませんが、 どうしてcosθがでてくるのか、なにがどこをあらわしているのか、 なぜベクトルをかけたのに数のみになって現れてくるのかがわかりません。 どなたか教えていただけないでしょうか。よろしくおねがいします。 ★完全解答希望★
お便り2006/7/19
from=ZELDA
ベクトルAB を V(AB)と書くことにする。 また、ベクトルa と ベクトルb の内積を V(a)・V(b) と表すことにする。 V(a)・V(b)=|V(a)||V(b)|cosθ が内積の定義です。だからcosθがでてくるのであり、 一見するとベクトルの掛け算なのに、実際はベクトルの掛け算ではないので、 内積はベクトルではなく実数になります。 ちなみにベクトルの掛け算は外積とよばれ、こちらはきちんとベクトルになります。
お便り2006/9/12
from=平 昭
こんにちは。なかなかお答えの難しい疑問ですね。
①どうしてcosθがでてくるのか
②なにがどこをあらわしているのか
③なぜベクトルをかけたのに数のみになって現れてくるのか
 このうち、①と③は、一言で言うと「そう決めたから」なのですが、
すると「なぜそう決めたのか」という疑問が出てくるでしょう。
そのあたりを説明してみたいと思います。
 まず、内積というのは、ベクトルの大きさ(長さ)を測る道具のようなものだと
思って下さい。大きさとか長さがほしいので、値はベクトルでなく実数になります。
(値がマイナスになる時もありますが。)
 
 さて、ベクトルaとベクトルbの掛け算をうまく定義して、「ベクトルの大きさ(長さ)
を測る道具」を作ることを考えます。(面倒なので→記号は省略します。以下、小文字の
a、b、cは全てベクトルだと思って下さい。)
 そしてaとbの掛け算を、通常の数の掛け算と区別する意味で、記号<a、b>で表す
ことにします。<a、b>にどんな性質を持たせると、ほしい道具ができるでしょうか。
 まず「大きさ(長さ)を測る」のですから
<a、a>=|a|^2
と決めたいですね。
  それと、kを実数として|ka|^2=k^2・|a|^2ですから
<ka、ka>=k^2・|a|^2
となってくれないと困ります。
そして、これを見ると
<ka、b>=<a、kb>=k<a、b>
と決めておけば都合がよさそうです。(掛け算する片方のベクトルをk倍したら、掛け算
の結果もk倍になる、という自然なルールです。)
 
 さらに、掛け算ですから、分配法則と交換法則を満たしてほしいものです。だから、
<a、b>=<b、a>(交換法則)
<a+b、c>=<a、c>+<b、c>(分配法則)
と決めることにします。
 さて、この二つの法則と<a、a>=|a|^2を使うと
 <a+b、a+b>
=|a+b|^2
=<a、a>+<a、b>+<b.a>+<b、b>
=|a|^2+|b|^2+2<a、b>、、、、、、、、、、★
となります。
 
 ここで、思い出したいことがあります。
|a+b|^2は、余弦定理を使うと、|a|、|b|、およびaとbのなす角をθとしてcosθを
使って表せるのです。
 cosθが出てくるわけが分かりそうですね。
 △OABを考えて、OA→=a、OB→=bとします。
a+bを(始点をOとして)作図し、a+bの先端の点をDとします。
 すると△OADは、AD=OBとなる三角形で、また角OAD=π-θ(θはaとbの
なす角です)になります。(残念ですが、私は画面上で図が描けません。ぜひ自分で描
いてみて下さい)
 そして△OADに余弦定理を使うと
|a+b|^2=|OD|^2
     =|a|^2+|b|^2-2|a||b|cos(π-θ)
         =|a|^2+|b|^2+2|a||b|cosθ
この式を★と比べると、
 
 2<a、b>=2|a||b|cosθ
つまり
 
 <a、b>=|a||b|cosθ
と定義しておけば、今まで習った数学と矛盾が起きず、都合がよいことが分かります。
これがcosθが出てくるわけです!
 そしてこの定義は、今まで決めてきた、
<a、a>=|a|^2
kを実数として <ka、b>=<a、kb>=k<a、b>
<a、b>=<b、a>(交換法則)
<a+b、c>=<a、c>+<b、c>(分配法則)
四つのルールを全て満たします。めでたしめでたし。(^o^)/
 ここまでは、新しく内積を作るという立場でしたから、見慣れない記号<>を使って
説明を書いてきました。以下は普通に()で、内積を表すことにします。
 さて、話が戻ります。
【疑問② なにがどこをあらわしているのか】を考えましょう。
 先ほど同様、△OABを考えて、OA→=a、OB→=b、aとbのなす角をθ
とします。
 BからOA(必要ならOAを含む直線)に垂線を下ろし、その足をPとします。
この時、
|OB|・|cosθ|=|OP|
です。(PがOに関してAと反対側にあれば、cosθが負になりますね)
 ですから内積とは、ベクトルaの「b方向の成分の大きさ」(同じことですが、
b方向の直線への正射影の長さ、ただし符号つき)を見ている、とも言えます。
もちろん、bのa方向成分をみている、と言ってもよいのですが。
 この内積⇔正射影という考え方はけっこう大事です。
この応用として、
直線の方程式:px+qy=cを、
ベα→を成分(p、q)のベクトル、x→を成分(x、y)のベクトルとして
内積で書いた方程式
(x→、α→)=c
とみる考え方があります。
この時、「x→のα→方向への正射影の長さ」=一定
ですから、x→は、α方向と直交する直線上の点になります。
(図を描いて考えてみて下さい。私は高校時代にこれを参考書で勉強してとても感心
しました(^o^))
  さらに、(x→、α→)=一定
は、x→とα→が2次元平面上のベクトルなら、上記のように
直線の方程式:px+qy=cになりますが、
x→とα→をそれぞれ、3次元空間のベクトル
(p、q、r)と(x、y、z)とすれば
(x→、α→)=dは
平面の方程式:px+qy+rz=d
になります。
 
 
 
 
